Eminem(エミネム)の「Framed」を和訳し、タイトルが示す「濡れ衣」の意味を解説する。殺人事件を語りながら無実を訴えるSlim Shady、固有名詞と言葉遊び、『Relapse』や「3 a.m.」との共通点、MV、Secret Serviceによる面談まで整理する。
※本記事には、殺人、流血、薬物、性的暴力を含む楽曲の解説がある。
Eminem「Framed」とは?
「Framed」は、Eminemが2017年12月15日に発表した9作目のスタジオアルバム[『Revival』の12曲目である。

政治、家族、依存症からの生還、キャリアへの不安などを扱う全19曲の中で、猟奇殺人、記憶の欠落、薬物、複数の声、ブラックユーモアを前面に出した異色のホラーコア曲となっている。
『Revival』発売日に行われた『Shade 45のQ&A』で、Eminemは「Framed」のビートから邪悪な印象を受け、連続殺人犯のような内容が必要だと感じた趣旨を説明している。先に物語の設定を作り、それに合う音を探したのではなく、Fredwreckの不穏なビートが歌詞の方向を決めたのである。
タイトル「Framed」の意味と曲全体のストーリー
動詞の`frame`には、偽の証拠や情報によって、無実の人を犯罪者に見せるという意味がある。`I was framed`であれば、「俺はハメられた」「濡れ衣を着せられた」となる。「額縁」を意味する`frame`ではなく、犯罪の文脈で使われる表現である。
しかし、Verse 1では、殺害した女性の遺体をSteven Averyのトレーラーハウス前に置き、Averyを犯人に仕立てようとする。自分が他人を`frame`しておきながら、警察に追及されると「自分こそframedされた」と訴える。この加害者と被害者の反転がタイトルの核心である。
三つのVerseで弁明が崩れていく
Verse 1では、DNAを残さないための服装まで説明し、女性を殺害して遺体を別人の家へ置く。ここでは犯行をかなり明確に記憶している。
Verse 2では、目を覚ますと車のトランクにIvanka Trumpがいるが、その理由を覚えていない。「クスリのせいで怪物になりつつある」と語り、殺人事件を報じる新聞の切り抜きを集めながら、自分には犯行の記憶がないと主張する。
Verse 3では、「ヴァースの中で殺人現場を描写したら、現実の事件と偶然一致しただけだ」という弁明へ移る。だが、血まみれのシャツ、行方不明者、具体的すぎる犯行描写、逃走、脱獄といった証拠が積み上がっているため、Chorusの「I was framed」は繰り返されるほど信用を失っていく。
最後の`I’m almost certain`も重要である。「ほぼ間違いない」と言いながら、本人さえ無実を完全には確信できていない。殺人をした記憶がないことと、殺人をしていないことは同じではない。このわずかな距離が、曲全体の不気味さと笑いを生んでいる。
[Verse 1]
Feeling kinky, lip syncing to Too $hort’s “Freaky Tales” (Biatch!)
変態じみた気分で、Too $hortの「Freaky Tales」で口パク(ビアーッチ)※1
Having creepy visions of whiskey drinking
ウイスキーを飲んでいる不気味な幻覚が見える
Envisioning sneaking into where Christie Brinkley dwells
クリスティ・ブリンクリーの住む場所に忍び込む姿を想像中※2
I know this is risky thinking but I wanna stick her like she’s decals
危険な考えだとは分かってるが、デカール(転写シール)みたいに彼女をスティック(犯す/刺す/貼る)したい※3
But when murdering females
だが、女を殺すときは
Better pay attention to these details or you could be derailed
こういう細部に気を配らないと、計画が台無しになるぞ※4
Better wear at least three layers of clothing or be in jail
少なくとも服を3枚は重ね着しろ、でなきゃ刑務所行きだ
If you get scratched because your DNA’ll
もし引っかかれたら、お前のDNAが
Be all up under her fingernails
女の爪の下にびっしり残るからな
Man, he hears you, I don’t think he cares
あいつには聞こえてる、でもヤツは気にしてないと思う
He gives a fuck, even his pinky swears
ヤツは気にしてる、小指にかけて誓う(小指まで悪態をついてやがる)※5
Three personalities burstin’ out of me, please beware
俺の中から三つの人格が飛び出してくる――気をつけろ※6
Her TV blares, can’t hear the creaking stairs
彼女のテレビは大音量だ、きしむ階段の音も聞こえやしない
She’s unaware in no underwear, she’s completely bare
彼女は気づいてない、下着も着てない、完全に裸だ
Turns around and screams, I remember distinctly
振り返って悲鳴を上げた、俺ははっきり覚えてる
I said “I’m here to do sink repairs”
「流し台の修理に来ました」と俺が言ったことを
Chop her up, put her body parts
彼女をバラバラにし、その切断された遺体のパーツをEminem「Framed」 Lyrics, from 『Revival』, 2017.
In front of Steven Avery’s trailer and leave ‘em there
スティーヴン・エイヴリーのトレーラーハウス前に置き、そのまま放置してやる※7
注釈
※1:“Freaky Tales”
Too $hortの「Freaky Tales」は、女性との性的な体験を延々と語る露骨なセックス・ラップである。したがって、性的感情が高まった気分になり、そのまま異常な性的妄想へ入る流れは自然である。
※2:Christie Brinkley

Christie Brinkleyは、Sports IllustratedやCoverGirlで知られるアメリカの代表的なスーパーモデルである。ここでは、殺人鬼スリム・シェイディが性的に執着する著名な美女として登場していると考えるのが基本である。
※3:“stick her like she’s decals”
「stick her(彼女を突き刺す)」と「sticker(ステッカー)」という同音異義語の言葉遊びを用い、最後はステッカーの別名である「decals(デカール)」という言葉で締めくくっている。
stick herには「彼女と性行為をする」という俗な含意があり、この殺人・侵入の文脈では強姦を示唆する表現として読める。
※4:スリム・シェイディからマーシャルへの忠告
スリム・シェイディはマーシャルに対し、言うことを聞かなければ捕まってしまうと説明している。その詳細については、このヴァースの後半で語られる。
また、このヴァースにおける「tales」「females」「these details」といった言葉で韻を踏むフロウは、同じヴァース内で言及されているToo $hortの楽曲『Freaky Tales』に見られるフロウとよく似ている。
※5:swear のダブル・ミーニング
「Pinky swear(指切り)」や「pinky promise(指切りげんまん)」とは、約束を交わした証として、二人が小指を絡め合う行為のことです。 ここでエミネムは、「swear(誓う)」という言葉を巧みに利用している。彼は、「指切り」に使われるはずの自分の小指でさえも、「swear(汚い言葉を吐く/罵る)」してしまうのだと言っている。
意味①(直訳): pinky swear = 小指を絡めて誓う(指切りする)
意味②(裏の意味): swear = 悪態をつく、暴言を吐く(swear word の swear)
※6:3つの人格
ここでいう「三つの人格」は、一般的に次の三つを指すと考えられる。
- Marshall Mathers:本名であり、父親・家族・過去などを語る私生活上の自分
- Eminem:ラッパーとして表舞台に立つ自分
- Slim Shady:残虐・下品・挑発的な考えを口にする別人格的キャラクター
※7:Steven Averyとは
Steven Avery(スティーヴン・エイヴリー)は、アメリカ・ウィスコンシン州出身の人物です。1985年の無実の罪での18年間の服役と、その後、2005年に起きたTeresa Halbach殺害事件で2007年に有罪判決を受けたことで世界的に知られ、ネットフリックスのドキュメンタリー番組『殺人者への道(Making a Murderer)』を通じて大きな社会問題となった。

① 1985年の冤罪事件
Averyは1985年、女性への性的暴行と殺人未遂で有罪となり、約18年間服役しました。しかし、DNA鑑定によって別人が犯人だったことが判明し、2003年に無罪となる。こちらは正式に冤罪だったと確定している。
② Teresa Halbach殺害事件
2005年、写真家Teresa HalbachがAveryの依頼を受け、彼の住む自動車解体場で中古車を撮影したあと行方不明になる。Averyは2007年に殺人罪で有罪となるが、弁護側は「警察などが証拠を仕込み、Averyを犯人に仕立てた」と主張した。
ここでは遺体の一部をAveryのトレーラーハウス前へ置き、Averyを犯人に仕立てようとしている。
つまりVerse 1では、自らSteven Averyを「frame(犯人に仕立てる)」しようとしている。その直後のChorusでは、今度は自分自身が「I was framed(俺はハメられた)」と無実を訴える。同じ“frame”という言葉を加害者側と被害者側の両方から使う、皮肉な構造になっている。
[Chorus]
But hey man, I was framed
いや、待ってくれ 俺はハメられたんだ
I know what this looks like, officers
お巡りさんたち、これがどう見えるかは分かってる
Please just give me one minute
頼むから、ほんの少しだけ時間をくれ
I think I can explain
説明できると思う
I ain’t murdered nobody
俺は誰も殺してない
I know these words are so nutty
こんな話、馬鹿げて聞こえるのは分かってる
But I’m just here to entertain
でも俺は、ただ楽しませに来ただけなんだ
How come your shirt is so bloody?
「じゃあどうして君のシャツが血まみれなんだ?」Eminem「Framed」 Lyrics, from 『Revival』, 2017.
There’s a missing person, so what?
行方不明者がいる?だからどうした?
He’s got nothin’ to do with me
そいつは俺とは何の関係もない
I’m almost certain I was framed
俺はハメられたんだ――ほぼ間違いない
注釈
※警察に対して「ハメられた」と無実を主張するが、「説明できると思う」「ほぼ確信している」と曖昧な言葉を使い、血まみれのシャツについても説明できていない。さらに、Verse 1では自ら遺体をSteven Averyの住居前に置いて彼を犯人に仕立てようとしており、その人物が今度は「自分が犯人に仕立てられた」と訴える皮肉な構造になっている。
[Verse 2]
Woke up, it was dawn, musta knew somethin’ was wrong
目が覚めたら夜明けだった、何かヤバいことが起きてるって感づいてたはずだ
Think I’m becomin’ a monster ‘cause of the drugs that I’m on
やってる薬のせいで、俺はモンスターになりかけてるんだと思う
Donald Duck’s on, there’s a Tonka Truck in the yard
ドナルド・ダックが流れてて、庭にはトンカ・トラックがある※8
But dog, how the fuck is Ivanka Trump in the trunk of my car?
でもよ、なんで俺の車のトランクにイヴァンカ・トランプがいるんだ?※9
Gotta get to the bottom of it to try to solve it
真相を突き止めて、解決しないとな
Must go above and beyond, ‘cause it’s incumbent upon me
徹底的にやるしかない、それが俺に課せられた務めだ
Plus I feel somewhat responsible for the dumb little blonde
それに、あのバカな金髪小娘に対しても、多少の責任を感じてる
Girl, that motherfuckin’ baton twirler that got dumped in the pond
あの池に放り込まれた、クソッタレのバトンガールだよ※10
Second murder with no recollection of it
二件目の殺人だが、その記憶はまるでない※11
Collectin’ newspaper articles, cuttin’ out sections from it
新聞記事を収集して、その一部を切り抜いている
Memory’s too fucked to remember, destructive temper
記憶が狂いすぎてて思い出せない、破壊的な気性だ
Cut my public defender’s jugular then stuck him up in a blender
国選弁護人の頸静脈を切り裂き、それからミキサーに突っ込んだ
‘Nother dismembered toddler discovered this winter probably
たぶんこの冬、またバラバラにされた幼児が見つかる
‘Cause the disassembled body
その分解された遺体は
Was covered up in the snow since the month of November oddly
奇妙なことに11月から雪に埋もれていたからな
I’m wanted for questioning
俺は事情聴取のために追われているEminem「Framed」 Lyrics, from 『Revival』, 2017.
Them son of a bitches probably just wanna pin this on me
あのクソ野郎ども、どうせ俺に罪をなすりつけたいだけだ
注釈
※8:固有名詞を利用した高度な音の連鎖が中心のワードプレイ
Donald Duck、Tonka Truck、Ivanka Trump、trunk
「Donald」がDonald Trumpを連想させ、「Tonka」が「Ivanka」と近い音を作り、「Trump」と「trunk」が一音違いで続く。このラインを含む『Framed』の歌詞は実際に米シークレットサービスから問題視され、Eminemは後に事情聴取を受けている。

「Tonka Truck」とは、Tonkaブランドの玩具のトラック

※9:米国シークレットサービスの調査対象となったライン
「incumbent」は名詞として「現職者、現職の政治家」を意味する。直前に当時の現職大統領Donald Trumpの娘Ivanka Trumpが登場しているため、「現職者」という意味を連想させる可能性もある。
この曲がリリースされた2017年当時、Ivanka Trumpは「現職のファースト・ドーター(大統領令嬢)」および「大統領顧問」と呼ばれていた。
※10:金髪のチアリーダー
「Framed」に登場する“金髪のバトントワラー”は、2008年に発表された「I’m Having a Relapse」の少女を再登場させたものと解釈できる。もし同一人物だとすれば、前作では行方不明だった少女が、その後池に遺棄されたことを示す形になる。
※11:Jeffrey Dahmerへの言及
これは、エミネムが過去に何度か言及しているジェフリー・ダーマーのことを指している可能性が高い。 ジェフリー・ダーマーは、2件目の殺人については何の記憶もないと主張しています。
3 a.m.の[Verse 2]でもダーマーを連想させるフレーズがあった。
[Chorus]
But hey man, I was framed
いや、待ってくれ 俺はハメられたんだ
I know what this looks like, officers
お巡りさんたち、これがどう見えるかは分かってる
Please just give me one minute
頼むから、ほんの少しだけ時間をくれ
I think I can explain
説明できると思う
I ain’t murdered nobody
俺は誰も殺してない
I know these words are so nutty
こんな話、馬鹿げて聞こえるのは分かってる
But I’m just here to entertain
でも俺は、ただ楽しませに来ただけなんだ
How come your shirt is so bloody?
「じゃあどうして君のシャツが血まみれなんだ?」Eminem「Framed」 Lyrics, from 『Revival』, 2017.
There’s a missing person, so what?
行方不明者がいる?だからどうした?
He’s got nothin’ to do with me
そいつは俺とは何の関係もない
I’m almost certain I was framed
俺はハメられたんだ――ほぼ間違いない
[Verse 3]
Still on the loose, they
まだ逃走中の俺を、ヤツらは
Spotted me inside McDonald’s Tuesday
火曜日にマクドナルドの中で俺を見つけた※12
In a Toronto Blue Jays cap, lookin’ like your college roommate
トロント・ブルージェイズのキャップをかぶって、大学のルームメイトみたいに※13
With Rihanna, Lupe, Saddam Hussein, Bobby Boucher
リアーナやルーペ、サダム・フセイン、ボビー・ブーシェと一緒にいた※14
Or was it Cool J? The cops is on a goose chase
いや、クール・Jだったか?警察は見当違いの追跡中だ
Just escaped from the state pen
州立刑務所から脱獄したばかり
For **** eight women who hate men
男嫌いの女8人を****した罪で入っていた※15
Don’t make it no weirder, I’m naked
これ以上変なことにするなよ、俺は全裸で
When I break in your basement
お前の家の地下室へ忍び込み
Under your baby’s play pen, I lay in, wait adjacent※16
お前の赤ん坊のベビーサークルの下に潜り込み、すぐそばで待ち伏せする
Facin’ the door, remainin’ patient while stayin’ complacent
ドアに向かって、平然と構えながら辛抱強く待つ
Blatant sexual implications are continuin’ to get thrown
露骨な性的暗示が、次々と投げかけられ
Insinuations are placed in little riddles and poems
ほのめかしは、ちょっとした謎かけや詩の中に仕込まれ※17
Left on your pillow in hopes, that when you get home
お前が帰宅したときに気づくように枕の上へ残す
You’ll get the hint, ho: I’m in your window※18
ヒントに気づくだろ、アバズレ:「俺は窓のところにいる」(“innuendo = ほのめかし”)
But it never occurred to me I could describe a murder scene
だが、ヴァースで殺人現場を描写しただけで※19
In a verse and be charged with first degree
第一級殺人罪に問われるとは思いもしなかった
‘Cause it just happened to match up perfectly
たまたま完璧に一致しただけだ
With the massacre or the Burger King burglary
あの大虐殺かバーガーキング侵入窃盗事件となEminem「Framed」 Lyrics, from 『Revival』, 2017.
No, officer, you see
違うんだ、お巡りさん、聞いてくれ
注釈
※12:マクドナルド
このマクドナルドの場面は、『Relapse』収録曲「3 a.m.」へのセルフリファレンスと考えられる。「3 a.m.」では、マクドナルドで裸のまま意識を取り戻し、全身血まみれで、カウンターの奥には遺体が転がっているという異常な状況であった。
※13:扮装
トロント・ブルージェイズは、MLBにおけるデトロイト・タイガースのライバルチームである。タイガースファンでもあるエミネムは、同チームとの公式コラボ・グッズ・コレクションをリリースしたこともあった。しかしこのヴァースでは、彼はあえてタイガースの宿敵のチームカラーを身にまとい、自身の姿を偽装している。

※14:著名人のネームドロップ
Rihanna:Eminemと何度も共演した歌手
Lupe Fiasco:シカゴ出身のラッパー
Saddam Hussein:2006年に処刑された元イラク大統領
Bobby Boucher:映画『ウォーターボーイ』の架空人物
LL Cool J:Eminemが強い影響を受けたラッパー
※15:伏字の謎
伏せられた単語は、服役理由としての文脈と、state pen/eight women/hate menという韻の連鎖から、rapingである可能性が非常に高い。women who hate menは文字どおり『男を嫌う女性たち』という意味である。
※16:同音異義“a Jason face in the door,”
「adjacent facin’ the door(ドアに隣接して向いている)」というフレーズは、「a Jason face in the door(ドアのところにジェイソンの顔)」と音がほぼ同じであり、映画『13日の金曜日』シリーズのジェイソンを連想させる。

※17:ストーリーテリング
ここでは、曲の中の物語と現実の世界が重ねられている。犯人が被害者の枕に残す「詩」をEminemのラップ、「被害者」をそのラップを聴くリスナーに重ねて読むこともできる。つまり、聝き手も怖い物語の中に巻き込まれたように感じさせる仕掛けである。
※18:ダブルミーニング “In your window” ,“innuendo”
in your windowは、発音上innuendo(性的・不快な内容を遠回しにほのめかす表現)を連想させる。直前のsexual implications/insinuations/riddles and poems/hintは言葉に別の意味を忍ばせて遠回しにほのめかすという、innuendoの性質を段階的に示していた。つまりEminemは、直前の数行でinnuendoの意味を説明しながら、その単語自体は口にせず、最後のin your windowの音の中に“innuendo”を隠した。
※19:現実になった皮肉
この曲の発表後、EminemはIvanka Trumpに関するFramedの歌詞を理由に、実際にシークレットサービスから事情聴取を受けることになる。ただし、第一級殺人罪に問われたわけではなく、調査後も連邦検察への付託は行われなかった。
そのため、このラインは発表時点では架空の状況であったが、歌詞で犯罪を描いたことが現実の捜査機関による事情聴取につながるという、皮肉な形で現実になった。
[Chorus]
But hey man, I was framed
いや、待ってくれ 俺はハメられたんだ
I know what this looks like, officers
お巡りさんたち、これがどう見えるかは分かってる
Please just give me one minute
頼むから、ほんの少しだけ時間をくれ
I think I can explain
説明できると思う
I ain’t murdered nobody
俺は誰も殺してない
I know these words are so nutty
こんな話、馬鹿げて聞こえるのは分かってる
But I’m just here to entertain
でも俺は、ただ楽しませに来ただけなんだ
How come your shirt is so bloody?
「じゃあどうして君のシャツが血まみれなんだ?」Eminem「Framed」 Lyrics, from 『Revival』, 2017.
There’s a missing person, so what?
行方不明者がいる?だからどうした?
He’s got nothin’ to do with me
そいつは俺とは何の関係もない
I’m almost certain I was framed
俺はハメられたんだ――ほぼ間違いない
Ivanka Trumpの一節とシークレットサービスの事情聴取
Verse 2のIvanka Trumpへの言及は、単なる歌詞上の騒動では終わらなかった。公開された文書を基にした報道によると、米シークレットサービスはEminemの反Donald Trump的な表現と「Framed」のIvankaに関する一節を問題視し、本人への事情聴取を行った。その後、この件は連邦検察へ送致されない「NON-REFERRED」という扱いになったとされる。
この事実によって、曲中の「歌詞で殺人現場を描写しただけなのに、現実の犯罪として扱われた」というVerse 3の弁明には、意図せず現実的な重みが加わった。
ただし、シークレットサービスが問題視したからといって、「dumb little blonde girl」が文法上必ずIvanka本人を指すと確定するわけではない。
「Framed」は「3 a.m.」の続編なのか――MVから読み解く時系列
「Framed」は、2009年のアルバム『Relapse』に収録された「3 a.m.」の世界観を受け継いだホラーコア曲である。薬物による錯乱、殺人後の記憶喪失、複数人格、精神施設、血まみれの現場といった共通点が多く、単なる作風の再利用ではなく、二つの物語がつながっていることを思わせる。
その関係はミュージックビデオでさらに明確になる。「Framed」の編集に関わったSunset Editは、MV公開時に本作を「Eminem’s sequel to 3AM(エミネムの『3AM』の続編)」と紹介している。
Eminem本人による公式声明ではないものの、少なくともMV制作側は「Framed」を「3 a.m.」の続編として扱っていたことが分かる。
「Framed」のMVは、Eminemが精神施設から脱走して2週間が経過したというニュースから始まる。この時点で彼には、すでに施設へ収容される原因となった過去がある。その過去の殺人事件が「3 a.m.」だったと考えれば、「3 a.m.」が先、「Framed」が後という流れが自然に成立する。

ただし、MVには時系列を意図的に曖昧にする仕掛けもある。刑事が最初に確認した時計は午前2時45分を示しているが、その後、時刻が午前3時になると、刑事は懐中時計を使ってEminemへ催眠をかける。最後には注射を打たれ、意識を失った状態で施設へ運ばれていく。
この演出から、「Framed」のあとに「3 a.m.」の殺人事件が始まるという前日譚説も生まれている。また、「Framed」が『3 a.m.』の前後両方を描いているというファン考察も存在する。催眠や薬物によって殺人鬼人格が呼び出されるため、本人には犯行の記憶が残らないという解釈である。
しかし、制作側が「続編」と紹介していることを重視するなら、「3 a.m.」が先、「Framed」が後と考えるのが最も妥当である。ただし、「Framed」の結末は再び午前3時へ戻るように作られているため、単純な一方向の物語ではない。
つまり、「3 a.m.」で最初の殺人事件が起こり、「Framed」では施設から脱走した殺人鬼が再び事件を起こす。そして午前3時になると催眠、薬物、別人格によって、また同じ惨劇が始まる可能性が示されるのである。
「Framed」は「3 a.m.」の正式な続編とまでは断定できないが、MV制作側から続編として紹介され、映像にも明確な接続が用意されている。両曲を一つの物語として見るなら、「3 a.m.」から始まった殺人鬼の悪夢が、「Framed」で再び繰り返される循環構造になっているのである。
「3 a.m.」の物語や歌詞については、Eminem「3 a.m.」の和訳・歌詞解説で詳しく解説している。


コメント