Detroitの古い家の前に座るThe Marshall Mathers LP 2期のEminem
19946 DRESDEN ST.RECOVERED / 2013

EVIDENCE FILE REOPENED

DETROIT / 19946 DRESDEN / DO NOT ARCHIVE

THE MARSHALL MATHERS LP 2

エミネム『The Marshall Mathers LP 2』アルバム徹底解説

昔を演じ直すためではない。
置き去りにした自分へ、答えを返すための帰還。

REC2000PAST / PRESENT
OPEN THE FILE
執筆・編集:Eminemjp.com編集部 公開: 最終更新:

ARCHIVE NOTE / 01

『The Marshall Mathers LP 2』とは

『The Marshall Mathers LP 2』は、Eminemが2013年に発表した8作目のスタジオ・アルバム。2000年の代表作と同じ個人名を掲げながら、当時の衝動をそのまま再現するのではなく、成功、家族、老い、過去の言動を現在の視点から点検する作品である。

Rick Rubinによるロックの引用と、Eminem周辺の精密なラップ・プロダクションが同居する。冒頭の「Bad Guy」が過去の物語を呼び戻し、「Headlights」が母親への攻撃を見直し、「Evil Twin」がSlim Shadyとの距離を問い直す。タイトルの「2」は懐古の番号ではなく、13年分の結果を引き受けるための枠組みとして機能している。

RETURN ADDRESS / 02

なぜ『The Marshall Mathers LP 2』なのか

続編という言葉だけでは、この「2」の意味を捉えきれない。

01 / NAME

Marshall Mathersへ戻る

「Eminem」や「Slim Shady」ではなく、本名を冠した作品名を再び選んだことが重要だ。世界的スターになった後の本人が、名声以前から抱えてきた怒りや防衛本能を個人史として読み直す入口になっている。

02 / SHADOW

Slim Shadyとの共存

挑発的な分身は消えない。しかし「Evil Twin」が示すように、MarshallとShadyは単純に善悪へ分けられない。過去の過激さを利用しながら、その結果を知る現在の声が割り込む二重性が本作の緊張を生む。

03 / AFTER SUCCESS

成功後に残った問題

地下シーンから巨大な成功へ到達しても、家族の傷や発言の記録は消えなかった。「Bad Guy」では作品が作者を追い、「Headlights」では母親への攻撃を振り返る。勝者の回顧ではなく、成功が保存した過去への応答である。

04 / THIRTEEN YEARS

13年という距離

2000年には怒りを外へ放つ若い父親だった。2013年には40代を迎え、依存症からの回復とキャリアの再建を経験している。同じ題名でも、語る身体と責任の位置が変わった。その差こそが「2」の内容になる。

EVIDENCE REWIND / 03

20002013

2000年に残した原点の記録を、13年後のMarshallが再び開く。2枚のジャケットと資料の色調が切り替わり、同じ名を持つ2作品の距離を示す。

SCROLL THROUGH THE ARCHIVE 13 YEARS LATER / RETURN TO THE HOUSE FILE 01 / 02
The Marshall Mathers LP アルバムジャケット
THE ORIGINAL FILE / 2000

THE ORIGINAL FILE / FILE 01

THE MARSHALL MATHERS LP

2000

2000年、Marshall Mathersが世界へ突きつけた原点。個人史と社会への怒りを巨大な成功へ変え、消せない記録を残した。

  • 成功
  • 崩壊
  • 記録
The Marshall Mathers LP 2 アルバムジャケット
THE FILE REOPENED / 2013

THE FILE REOPENED / FILE 02

THE MARSHALL MATHERS LP 2

2013

13年後、その名前と過去を再び引き受けるために戻ってきた。過去の複製ではなく、結果を知る現在からの帰還。

  • 回復
  • 帰還
  • 再記述

作品から読み取れること:『The Marshall Mathers LP 2』は若さを取り戻す試みというより、若い自分が残した資料を現在の自分が読み返す構造を持つ。ただし、これは収録曲全体から導く解釈であり、すべての曲が一つの物語として公式に説明されているわけではない。

SESSION LOG / 04

制作背景——『Recovery』の先で

2010年の『Recovery』は、依存症からの再起を率直な言葉と大きなポップ・サウンドで示した。その後Eminemは、Royce da 5'9"とのBad Meets Evil名義、Shady Records周辺の活動、客演を通じてラップの競技性を前面へ戻していく。『The Marshall Mathers LP 2』は、その回復後の技術的な自信を、過去との対話へ接続した作品だった。

Executive ProducerにはDr. DreとRick Rubinが名を連ねる。Dr. Dreは作品全体を統括する立場から関与し、Rick Rubinは「Berzerk」「Rhyme or Reason」「So Far...」「Love Game」で古いロックやファンクの断片を荒いドラムへ結び直した。そこへ1980~90年代ヒップホップの引用、フロウ、バトル感覚が重なる。一方、Eminem自身、Emile Haynie、Alex da Kid、DJ Khalil、Frequency、DVLPらの制作は、内省曲から高密度なラップ曲まで異なる温度を支えている。

2013年は、ダウンロード販売とストリーミングの併存が進み、SNSでフレーズや技術が即座に切り取られる時代だった。「Rap God」の長尺と密度はその環境で話題を拡散しながら、アルバム全体はカセットや古い家のイメージを選ぶ。新しい流通の中で、あえて古い記録媒体へ戻る対比が鮮明になった。

  1. Hot 97のインタビューで、次作の制作開始を明かす。
  2. MTV Video Music Awards中のBeats by Dre広告で、題名と発売日を発表。
  3. Dresden Streetの生家を写したカバー・アートを公開。
  4. 通常盤16曲のトラックリストを公開。
Dr. Dre、Rick Rubin、Eminemの写真と制作クレジットを掲載したMMLP2ブックレット
PRODUCTION FILE / DR. DRE & RICK RUBIN
DetroitのNEIGHBORHOOD WATCH標識を使用したMMLP2アートワーク
DETROIT FILE / NEIGHBORHOOD WATCH

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SIGNATURE TRACK / 06

RAP GOD——速さではなく、総合力の展示

「Rap God」のコンセプトは、キャリアを通じて受けてきた批判、影響を受けたMC、ポップ文化、世代交代への意識を、一曲の中で処理することにある。高速ラップは目立つ要素だが、価値は速さだけではない。拍の細分化、声色、アクセント、内部韻、引用の密度を区間ごとに切り替え、長い曲を動かし続ける構成にある。

  • 内部韻と多重韻
  • 声色の切り替え
  • フロウの速度変化
  • ヒップホップ史への参照
  • 技術的マニフェスト

Guinness World Recordsは、ヒット・シングルに含まれる語数として1,560語、曲中の15秒間に97語を発する区間を記録している。ただし、これを根拠に「世界最速のラッパー」と一般化することはできない。記録が示すのは、特定の楽曲における語数と一つの高速区間である。

2013年のヒップホップでは新しい世代が中心を担う一方、Eminemは過去の功績だけで地位を主張せず、現在の技術で競争へ参加する姿勢を示した。長さ、話題性、模倣されやすい高速部分、膨大な参照が重なり、本作を代表する曲になった。

The Monsterの制作ビジュアル
GLOBAL SINGLE / 2013 / VISUAL FILE

GLOBAL SINGLE / 07

INNER VOICE / FILE 12

「The Monster」——成功の裏側に住み続ける声

「Rap God」が、現在も競争へ参加するMCとしての技術を外側へ突きつけた曲なら、「The Monster」は、その成功を支える内面の不安へ視線を戻す曲である。

Rihannaの大きく開けたフックは、名声によって消えなかった声や自己破壊への衝動を、世界規模のポップ・シングルへ変換した。ここで語られる“怪物”は、完全に追い払うべき外敵ではない。成功、創作、過去の人格と結びついた存在を、自分の一部として抱えたまま進もうとする構造になっている。

これは「Love the Way You Lie」の単純な再現ではない。他者との破壊的な関係から、自分自身の内側に住む声との共存へ主題を移した再共演である。技術の密度でアルバムを象徴する「Rap God」に対し、「The Monster」は本作の内面性を最も広い聴衆へ届けた。

BILLBOARD HOT 100#1GLOBAL SINGLE
57TH GRAMMY AWARDSWINNERBEST RAP/SUNG COLLABORATION
赤と青に分割されたThe Monsterのアートワーク
RED SIDE / BLUE SIDE / MONSTER ACCEPTED

CASE REOPENED / 08

「Bad Guy」と「Stan」の続編性

アルバムは、過去を懐かしむ場面ではなく、過去に追いつかれる場面から始まる。

Matthewは誰なのか

「Bad Guy」前半の語り手Matthewは、「Stan」で命を落としたStanの弟として描かれる。幼かった彼が成長し、兄の死に結びついた存在としてEminemを追うことで、2000年のフィクションは13年後の作者へ戻ってくる。初めて聴く人には、熱狂的ファンの悲劇が残された家族の側から語り直される物語と考えると分かりやすい。

後半で物語が変わる意味

ビートが切り替わる後半では、Matthew個人の復讐だけではなく、Eminemが作ってきた人物、発言、罪悪感、死への恐れが一つの声へ重なる。過去の作品が作者の支配を離れ、本人を問い詰める構造である。これは公式コメントを一文で再現した説明ではなく、語り手と視点の変化から読み取れる解釈だ。

なぜ1曲目なのか

「Stan」という代表作を入口にすることで、題名の継承を即座に物語へ変える。『The Marshall Mathers LP 2』は旧作の音をなぞるのではなく、旧作が残した結果へ入っていく——そのルールを最初に示す役割を担う。

HeadlightsとEvil Twinの歌詞およびEminemの後ろ姿を掲載したMMLP2ブックレット
BOOKLET FILE / HEADLIGHTS — EVIL TWIN

LETTER HOME / 09

「Headlights」と母親への謝罪

初期のEminemは、母Debbieとの対立を「My Name Is」「Cleanin' Out My Closet」などで公にし、母親を攻撃する物語をキャリアの一部にした。「Headlights」はその記録を消そうとせず、息子の側にも一方的な語りと傷つける言葉があったと認める。

視点の変化には、年齢、親としての経験、依存症からの回復後に得た距離が重なる。曲は家族関係が完全に修復されたという証明ではないが、少なくとも過去の攻撃を正当化し続ける姿勢から離れ、謝罪を公の作品として残した。

母への怒りが強いエネルギーだった『The Marshall Mathers LP』に対し、「Headlights」はその怒りが家族史へ与えた影響を見直す。だから本作の内省は抽象的な「成熟」ではなく、旧作の重要な主題に具体的な返答を置く行為として読める。

2014年のミュージック・ビデオはSpike Leeが監督し、母の日に公開された。

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MASTER REEL / 10

The Marshall Mathers LP 2 収録曲一覧

通常盤16曲と、デラックス盤の追加ディスク5曲を区別して掲載。客演表記は公式曲名を基準にし、コーラス参加などは注記した。

The Marshall Mathers LP 2 アルバムジャケット
MASTER COVER / MMLP2 / 2013
DANGER KEEP OUTの貼り紙にMMLP2の通常盤とDeluxe盤収録曲を記載したアートワーク
OFFICIAL TRACKLIST NOTICE / CONDEMNED PROPERTY
  1. 01Bad Guy
    Producer S1、M-Phazes/StreetRunner、Vinny Venditto(後半)
  2. 02Parking Lot (Skit)
    Producer Eminem
  3. 03Rhyme or Reason
    Producer Rick Rubin、Eminem
  4. 04So Much Better
    Producer Eminem(Luis Resto追加制作)
  5. 05SurvivalSingle
    Vocals Liz Rodrigues Producer DJ Khalil
  6. 06Legacy
    Vocals Polina Producer Emile Haynie
  7. 07Asshole
    Feat. Skylar Grey Producer Alex da Kid(Eminem追加制作)
  8. 08BerzerkSingle
    Producer Rick Rubin
  9. 09Rap GodSingle
    Producer DVLP(Filthy共同制作)
  10. 10Brainless
    Producer Eminem(Luis Resto追加制作)
  11. 11Stronger Than I Was
    Producer Eminem、Luis Resto
  12. 12The MonsterSingle
    Feat. Rihanna Producer Frequency、Aalias
  13. 13So Far...
    Producer Rick Rubin
  14. 14Love Game
    Feat. Kendrick Lamar Producer Rick Rubin
  15. 15HeadlightsSingle
    Feat. Nate Ruess Producer Emile Haynie、Jeff Bhasker(Eminem追加制作)
  16. 16Evil Twin
    Producer Sid Roams(Eminem追加制作)
DELUXE EDITION / BONUS DISC5 ADDITIONAL TRACKS
  1. 17Baby
    Producer Eminem、Luis Resto
  2. 18Desperation
    Feat. Jamie N Commons Producer Alex da Kid
  3. 19Groundhog Day
    Producer Cardiak、Frank Dukes(Eminem共同制作)
  4. 20Beautiful Pain
    Feat. Sia Producer Emile Haynie(Eminem共同制作)
  5. 21Wicked Ways
    Feat. X Ambassadors Producer Alex da Kid

通常盤の末尾に隠し曲は設定されていない。デラックス盤は通常盤16曲に、別ディスク扱いの5曲を追加した全21曲構成。盤・地域によってパッケージ表記が異なる場合があるため、購入時は商品情報を確認してください。

限定ボーナス曲:「Don't Front (feat. Buckshot)」は、2013年に『Call of Duty: Ghosts』とのバンドル企画で提供された楽曲。通常盤16曲/デラックス盤21曲の曲数には含めていない。

PERSONNEL FILE / 11

参加アーティストとプロデューサー

客演は曲の色を足すだけでなく、Eminem一人では作れない視点や時代の接点を与えている。

Rihanna

The Monster / Featured Vocal

大きく開けたコーラスで、内面の不安という私的な主題を世界的なポップ・シングルへ変換した。

Kendrick Lamar

Love Game / Featured Rap

当時の新世代を代表するMCとして、演技、ユーモア、リズムの切り替えをEminemと競う。

Skylar Grey

Asshole / Featured Vocal

冷たい旋律で曲の自己嫌悪と攻撃性をつなぎ、アルバムの暗いポップ面を支える。

Nate Ruess

Headlights / Featured Vocal

痛みを開くコーラスが、謝罪の重さを過度な劇性ではなく、人間的な距離へ置く。

Liz Rodrigues

Survival / Chorus

硬いギターの中で持続するフックを担い、曲を大規模なアンセムとして成立させる。

Dr. Dre

Executive Producer

単曲の制作名義よりも作品全体を統括する立場で、Eminemの原点と2013年を結ぶ。

Rick Rubin

Executive Producer / Producer

ロック、ファンク、初期ヒップホップのざらついた引用を4曲へ持ち込み、回顧を音像にした。

Luis Resto

Additional Production / Keyboards

Eminemの長年の協力者として、複数曲の和声、鍵盤、追加制作を整え、声の密度を支える。

Emile Haynie

Legacy / Headlights / Beautiful Pain

空間のある編曲と感情的な旋律で、技術中心の曲群に回想と脆さを持ち込んだ。

その他の主要参加者:Alex da Kid、DJ Khalil、Frequency、Aalias、DVLP、S1、M-Phazes、Sid Roams、StreetRunner、Jeff Bhasker、Cardiak、Frank Dukes、Polina、Jamie N Commons、Sia、X Ambassadors。

RESULTS / 12

評価と商業的成果

大きな初動とシングルの成功を得る一方、批評は技術的な強度と長さ・表現の古さをめぐって分かれた。

US BILLBOARD 200#1

初週約79万2,000枚で初登場1位。Eminemのアルバムとして7作連続の米国1位となった。

UNITED KINGDOM#1

初週14万3,000枚超で首位。英国で7作連続1位を獲得した初の米国アーティストと報じられた。

SINGLES / HOT 100#1

「The Monster」がBillboard Hot 100首位。「Berzerk」は3位、「Rap God」は7位に到達。

METACRITIC72/100

評論家レビュー33件に基づくMetascore。ユーザースコアとは別の指標である。

各国での反響

米国、英国に加えてオーストラリアでもアルバム・チャート首位を獲得。カナダでは2013年の年間トップセリング・アルバムとなった。ロック色の強い先行曲「Berzerk」、技術が話題になった「Rap God」、Rihannaとの「The Monster」が異なる層へ作品を運んだ。

批評家からの評価

批評では、言葉の技術、Rick Rubinを含む多様な制作、過去を自己検証する構想が評価された。一方、長い収録時間、旧来の攻撃的表現、曲ごとの統一感には否定的な意見もあった。Metacriticの72は「概ね好意的」の範囲だが、無条件の絶賛を示す数字ではない。

受賞と後年の位置づけ

第57回グラミー賞でBest Rap Album、「The Monster」でBest Rap/Sung Collaborationを受賞。RIAAは2017年に米国4×Platinumを認定した。後年は、2000年の勢いの再現ではなく、ベテランが自己引用を物語へ変えた転換作として評価されている。

DOMESTIC FILE / JP

日本での『The Marshall Mathers LP 2』

全米・全英1位という世界的な熱狂から約2週間後、日本盤が到着した。

JAPAN RELEASE 2013.11.20

ユニバーサル ミュージックから国内盤を発売。

ORICON WEEKLY #10

オリコン週間アルバムランキングで記録した最高位。

CHART RUN 22 WEEKS

週間アルバムランキングTOP300への登場回数。

輸入盤・配信が先行、日本盤は11月20日

米国発売日の11月5日前後からデジタル配信と輸入盤が先行し、日本国内盤は2013年11月20日に発売された。通常盤に加えて、追加ディスク5曲を収録したデラックス・エディションも同日に展開され、日本のリスナーは16曲版と全21曲版から選べる形になった。

最高10位でも、22週にわたってチャートイン

オリコンでの最高位は10位、登場回数は22週。日本で1位を獲得した『Relapse』、最高6位の『Recovery』と比べると初動の順位は控えめだが、発売週だけで消える作品ではなかった。世界的な首位記録とは温度差がありつつも、継続して聴かれ、購入されたアルバムだったことが分かる。

国内向け特集で強調された「13年後の帰還」

Billboard JAPANの日本盤発売時の特集では、世界73か国のiTunes総合アルバム・チャート1位や全米・全英1位とともに、2000年作から13年を経て同じ題名へ戻った意味が大きく扱われた。単なる高速ラップの作品ではなく、名盤の続編へ挑んだキャリア上の大きな出来事として紹介されている。

国内発売日・商品形態は当時のBillboard JAPAN掲載情報、最高順位と登場回数はORICON NEWSの作品・ランキング情報に基づく。

TWO HOUSES / 13

『The Marshall Mathers LP』とのつながり

同じ場所へ戻っても、同じ人間には戻れない。

タイトル
Eminemではなく個人名「Marshall Mathers」を再び掲げ、作品を本人の記録として位置づける。
家のビジュアル
DetroitのDresden Streetにあった家を再提示し、成功以前の場所を記憶の入口にする。
過去作品への参照
「Stan」から「Bad Guy」、「Criminal」から「Parking Lot」など、旧作の場面を結果の側から続ける。
物語の続編性
人物や発言が13年後に戻ってくる。続編は音の複製ではなく、時間が与えた因果を扱う。
音楽性の違い
2000年作のDr. Dre中心の鋭い統一感に対し、本作はRick Rubinのロック引用、ポップ、内省曲を広く混在させる。
変化した視点
若い男の怒りから、40代のアーティストによる責任、老い、技術、家族の再検証へ移る。
荒れたDresden Streetの家の内部にMMLP2の文字を重ねたアートワーク
THE HOUSE / INTERIOR FILE / 13 YEARS LATER
荒れた室内写真と楽曲クレジットを掲載したMMLP2ブックレット見開き
BOOKLET ARCHIVE / ROOM / CREDITS

METHOD / 14

記憶は、書き直される

本作の多くの曲では、過去の固有名詞や出来事が、そのまま保存された記録としてではなく、現在の韻と構成によって書き直される。Eminemの技術は、速く話すことだけではない。古い場面へ新しい語り手を置き、同じ出来事の意味を変える編集能力にある。

カセット、古い紙、家の写真という視覚モチーフも同じ働きをする。保存は過去を固定する行為に見えるが、資料を開く人が変われば読み方も変わる。『The Marshall Mathers LP 2』は、その再読の過程をアルバムの形にした。

CLOSING NOTE / 15

The Marshall Mathers LP 2が残したもの

『The Marshall Mathers LP 2』は、Eminemが昔の成功へ戻ったアルバムではない。2000年に放った怒り、家族への攻撃、Slim Shadyという分身、名声を得る前のDetroitを、回復後の40代の視点から開き直した作品である。「Bad Guy」では過去の物語が作者を追い、「Headlights」では母親へ向けた言葉の責任を認め、「Evil Twin」では過激な人格を他人のせいにできないと示す。その一方で「Rap God」や「Berzerk」は、現在も競争に参加するMCとしての自信を強く刻み、「The Monster」は内面の不安を大規模なポップ・シングルへ開いた。音楽性は2000年作の完全な再現ではなく、ロックの引用、ポップな客演、長い技術曲が混在する。だからこそ本作は、原点回帰と前進のどちらか一方ではない。過去を保存した家へ戻り、変わった自分と変わらない衝動を同時に確認する、キャリア中盤の自己検証なのである。

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LISTEN / BUY / 16

購入・ストリーミング

盤種、追加曲、輸入盤・国内盤の表記を確認してから選んでください。

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FREQUENT QUESTIONS / 17

The Marshall Mathers LP 2についてよくある質問

『The Marshall Mathers LP 2』はいつ発売された?

米国では2013年11月5日に発売された。Eminemの8作目のスタジオ・アルバムにあたる。

なぜタイトルに「2」が付いている?

2000年の『The Marshall Mathers LP』の題名と家のイメージを継承し、13年後のEminemが過去の人物像、家族、成功後の人生を再検証する構造を示すため。ただし、音楽的な完全再現ではない。

通常盤とデラックス盤は何曲?

通常盤はスキットを含む16曲。デラックス盤は追加ディスクの5曲を加えた全21曲となる。

「Bad Guy」は「Stan」の続編?

はい。「Stan」に登場したStanの弟Matthewが成長し、兄の死をEminemに問い返す物語として始まる。後半では過去の作品や言動が本人を追いかける構造へ広がる。

「Rap God」は世界最速のラップ?

Guinness World Recordsは、ヒット・シングルに含まれる語数として1,560語を記録し、15秒間に97語を発する区間を紹介している。

グラミー賞を受賞した?

第57回グラミー賞でBest Rap Albumを受賞し、「The Monster」もBest Rap/Sung Collaborationを受賞した。

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