エミネムが何故リル・ウェインをディスしたのかを説明する前に、エミネムとリル・ウェイン、50セント、3人の2006年以降の“ヒップホップシーンでの立ち位置”を整理する必要があります。

エミネムは2004年に4thアルバム「 Encore 」発売以降、引退説が飛び交っていました。2005年の暮れには初のベストアルバム「 Curttain Call 」を発売し、第一線から距離を置くことになります。

そして50セントは2003年のヒップホップシーンを席巻し、2005年には2ndアルバム「 The Massacre 」を発売。発売初週に114万枚を売上を記録する大ヒットに。ただし、3rdアルバム以降は苦戦することになります。

逆にリル・ウェインは2006年~2010年のヒップホップシーンの頂点に君臨することになります。2005年12月に5thアルバム『Tha Carter II』をリリース。代表曲の一つでもあるシングル曲「Fireman」もこのアルバムに収録されている。「Tha Carter II」は6週間でプラチナ・セールスを記録。

2006年、ウェインは「Dedication 2」というミックステープをリリース。アメリカの音楽レビューサイト「Pitchfork」が2016年に発表した「The 50 Best Rap Mixtapes of the Millennium」と題した、2000年以降のミックステープのベスト50枚を評価した記事によると、6位に『Dedication 2』がランクインしています。2007年にも「Da Drought 3 」というミックステープをリリース。「Da Drought 3」は多くのヒップホップファンから史上最高のミックステープと評価されており、「Pitchfork」はこのミックステープを1位としている。

当時、ウェインは 「生きている中で最高のラッパー」と自称していたが、彼は他のラッパーのビートで、より優れたラップをすることで実力を見せつけていた。また、フリー・ミックステープをリリースする事でウェインの曲はラジオに引っ張りだこになった。

また、数多くのアーティストがリル・ウェインと共演し、2007年:12曲、2008年:21曲、2009年:21曲、2010年:12曲の「Feat. Lil’ Wayne」の曲がリリースされていた。これだけの期間でこれだけの共演参加したラッパーは他にいない。

2007年、50セントが「ファンク・マスター・フレックス」のインタビューにて、「リル・ウェインが多くの曲に共演参加していることについてどう感じているか」を尋ねられ、50セントはウェインの事を「誰とでも一緒に曲を作る “ラップ売春婦 “」と一蹴。同年、MTVは「Hottest MCs in the game」のリストの1位にリル・ウェインを指名し、50セントはそれについても否定的な発言をしていた。

50セントは 「Part Time Lover」という曲で、当時「ホモ疑惑⁉」と話題になったリル・ウェインとバードマンのキス写真の事を取り上げディスした。
2008年リル・ウェインの「Louisianimal」という曲がリーク。ウェインは50セントに対し「俺は1ドルのことしか考えていない/2クォーター(1ドルの半分=50セント)なんてクソ食らえだ/ビッチはビタミンウォーターにシロップを注ぐ」と言って50セントをディス。50セントはビタミンウォーターの販売に力を入れていた。

またウェインは 「Let’s Talk Money」という曲の中で「Pimp C」と一緒に50セントをディス。この曲がリリースされる前にPimp Cは亡くなっており、ウェインはPimp Cから「50に反応するな。お前がやりたいこと続けろ」と言われたとラップしている。

2008年6月、ウェインは自身最大のアルバム『Tha Carter 3』をリリース。百万枚以上の販売を記録しトリプル・プラチナを獲得した。そんな中、50セントは絶えずウェインをディスしていた。これは50セントのプロモーションの一環だったが、ウェインはPimp Cの忠告通り50セントに反応しなくなった。

2008年頃、ウェインがはじめてエミネムに曲を一緒に作ろうと手を差し伸べたがエミネムは返事をしなかった。50セントと敵対しているウェインと一緒に曲作りをすることに抵抗があった。

6thアルバム「Recovery」が発売された当初、「エミネムはリル・ウェインにディスソングを作っていた」と言われていました。中村明美の「ニューヨーク通信」「Recovery」に収録されている「Won’t Back Down」のヴァース3で、ウェインをディスしている。しかし同じく「Recovery」に収録されている「No Love」ではリル・ウェインと共演している。

「Won’t Back Down」は恐らく2009年初頭に収録されたと言われており、この時期までエミネムはリル・ウェインの事をよく思っていなかった。

2009年、50セントがラジオ番組に出演しウェインについて問われ、50セントは「ウェインは才能のあるアーティストだよ。それを奪うことはできないが、彼を戦闘状況に置けば、俺の一貫性はヤツの首をへし折るぜ」とウェインの実力を認めるコメント。この発言がターニングポイントで、50セントVSリル・ウェインに一区切りつくことになる。

2010年、エミネムは「ビッグ・ボーイ・ラジオ」に出演。エミネムは活動休止中のことを振り返っており、リル・ウェインとカニエ・ウェストの人気の高さに嫉妬し、彼らへのディス・ソングを作ろうとしたと語っている。しかし、当時人気絶頂のウェインをディスることは、エミネム自身にとって「キャリアの自殺行為」になるとも語っていた。エミネムは活動休止中の時期を後悔しているとも語っている。2011年、エミネムはSiriusXMのインタビューで「リル・ウェインはドープなラッパーだ」と答えている。

エミネムがリル・ウェインを非難した要因は
①50セントとの対立による影響
②リル・ウェインの影響力、人気にジェラシーを感じていたため

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