
MIXTAPE
始まりは、ストリートへ。
新人の声を届けるミックステープ。その小さな企画が、レーベル全体を映す一枚になっていく。
EMINEM PRESENTS

新人の声を届けるミックステープ。その小さな企画が、レーベル全体を映す一枚になっていく。

Eminem、Obie Trice、D12。既存の声と、次に聴かせたい声を、一つの企画へ集める。

Ca$his、Stat Quo、Bobby Creekwater。2006年のShadyが広げようとした、三つの可能性。

制作の充実を受け、新曲を加えて正式なアルバムへ。2006年12月5日、店頭へ送り出された。
FILE 01 / SHADY RECORDS
Eminemの名で開く、Shady Recordsの扉。
スターの新作を待つ耳に、
まだ知らない声を届ける。
『Eminem Presents: The Re-Up』は、Shady Recordsを中心に制作されたコンピレーション。Eminemの通常のソロ・アルバムでも、50 Centとの二人組のアルバムでもない。既存アーティストの信頼と新人の可能性を、一枚でつなぐショーケースだ。
公式アルバム情報 ↗


FILE 02 / SHADY RECORDS
ミックステープから、正式アルバムへ。
最初から大きなスタジオ・アルバムとして始まったわけではない。狙いは、Stat Quo、Ca$his、Bobby Creekwaterを紹介するストリート向けミックステープだった。
しかし制作が進むと、楽曲は通常のアルバムのように作り込まれていった。Eminemはラフなまま出すより、新曲を加えて完成させ、レコード店へ届ける道を選んだ。形を大きくする理由は、新人への後押しを大きくするためだった。
新曲と既存曲のリミックス、短い独演と集団曲が同居するのは、この出発点と無関係ではない。曲を一つずつ聴く楽しさと、レーベルの声を連続して浴びる感覚。その両方が残っている。
2006年の発表文 ↗

FILE 03 / SHADY RECORDS
看板の向こう側に、顔と声がある。
EminemとPaul Rosenbergが立ち上げたShadyは、D12、Obie Triceらとともに輪郭を築いてきた。2006年の本作では、デトロイトの仲間に、南部と西海岸の新しい声を接続する。
レーベルの所属、グループの所属、客演は同じ意味ではない。50 CentはShady/Aftermathとの契約関係を持つ一方でG-Unitの中心人物でもある。Lloyd Banksを含むG-Unit全体をShady所属としてひとまとめにはできない。
Shady Recordsの歩み ↗
主催者、ラッパー、プロデューサー、そしてカバーの描き手。
LISTEN / No Apologies / Public Enemy #1
2006年は『Second Round’s on Me』の年。既存組と新人をつなぐ。
LISTEN / Pistol Pistol (Remix) / Cry Now
個々のメンバーが別々の曲へ登場。集団の声が一枚に点在する。
LISTEN / Murder / Trapped / Whatever You Want
EminemとDr. Dreの後押しを受け、Shady / Aftermathとの共同契約で飛躍。G-Unitを率いる立場から本作に参加し、二人での掛け合いと四人での共演をつなぐ。
LISTEN / You Don’t Know / The Re-Up / Jimmy Crack Corn
50 Centとともに、G-Unitから参戦。
LISTEN / You Don’t KnowALSO FEATURING Akon · Nate Dogg
106 & Park, 2006 — Photography: Shareif ↗THE REASON THIS RECORD EXISTS
この三人を聴くために、
もう一度、針を落とす。
ARTIST FILE / 01CHICAGO → ORANGE COUNTY
シカゴに生まれ、カリフォルニアのOrange Countyへ移ったCa$his。デトロイトの印象が強いShadyに、西海岸で育ったラッパーの声を持ち込む。大きな看板と同じ場所へ出す、という本作の狙いが最も分かりやすく表れる人物だ。
「You Don’t Know」ではEminem、50 Cent、Lloyd Banksと並ぶ。一方、「Everything Is Shady」「Talkin’ All That」ではRikanatti制作のソロ枠を二つ持つ。客演だけで終わらず、一人のMCとして覚える時間も確保されている。
硬い発声と短く区切るフレーズが耳に残る。Obieとの「We Ride for Shady」では先輩との並び、「Cry Now」では人数の多い曲での存在感を聴ける。2007年の『The County Hound EP』へ向かう前段として、紹介の方法そのものが充実している。
ARTIST FILE / 02ATLANTA / SHADY × AFTERMATH
Stat Quoは、アトランタのミックステープ活動からEminemとDr. Dreの耳へ届いたMC。ShadyとAftermathの双方につながる契約関係を持ち、Eminem『Encore』の「Spend Some Time」にも参加していた。完全な無名の初登場ではなく、次の大きな一歩を待つ人物だった。
本作では「By My Side」「Tryin’ Ta Win」「Get Low」という三つのソロ枠を得る。Focus...、The Alchemist、Dr. DreとDawaun Parker。制作陣の異なる曲を通して、一つの音に限定されない声の使い方を聴かせる。
低い声のざらつき、南部の間合い、言葉を前へ運ぶ押し出し。Bobbyと同じアトランタでも表情は違う。「Smack That」のリミックスでは、ヒット曲の形式にも接続する。2006年当時の期待は、後年の結果から逆算せず、この複数の入口から受け止めたい。
ARTIST FILE / 03ATLANTA / SHADY RECORDS
Bobby Creekwaterもアトランタ出身。デモをきっかけにEminem側の関心を集め、2005年にShadyへ加わった。2006年の発表文では、The Alchemistとのスタジオ作業が契約へ向かう経緯の一部として語られている。
本作の中心はソロ曲「There He Is」。Alchemistのビートを一曲まるごと任され、少し粘りを帯びた節回しと落ち着いた声で存在を残す。大物の短い客演に囲まれた紹介ではなく、本人の時間を確保したショーケースだ。
「We’re Back」「Cry Now」では集団の中へ入り、「Smack That」「Shake That」のリミックスでは、馴染みあるヒット曲へ新しい声を差し込む。ソロとポップな枠の両方を持つことが、当時どのように聴いてほしかったのかを示している。
FILE 05 / SHADY RECORDS
所属の違いを越えて、同じビートへ。

EminemとDr. Dre、50 CentとそのG-Unit。本作では50 Centの参加に加え、Lloyd Banksが「You Don’t Know」で合流する。
「The Re-Up」「Jimmy Crack Corn」はEminemと50 Centの二人。「You Don’t Know」は四人。「Ski Mask Way」は既存曲の再構築。共演の形を変えながら、ネットワークが音楽として見える。

G-Unitは独自のグループであり、レーベルの名前でもある。2008年にもBanksとTony Yayoはその看板のもとで活動を続けた。
FILE 06 / SHADY RECORDS
声を集めた人が、顔も描いた。
DRAWN BY EMINEM.
『The Re-Up』のジャケットはEminem自身の手による人物画。2026年のShade 45で、人物を別々に描き、コンピューターで大きさをそろえて組み合わせたと振り返っている。費やした時間は、およそ2か月だった。
04 / THE RE-UP
01 / PENCIL DETAIL
02 / PORTRAITS一人ずつ描く。
サイズを合わせる。
同じ画面に集める。
子どもの頃にはコミックを見ながら描いていたという。ラップの言葉を組み立てる人が、ここでは顔の線を積み重ねている。個々の肖像を集めて一枚にする方法は、別々のMCの声を集めた作品のあり方にも重なる。
完成したカバーを拡大すると、濃淡の違い、輪郭の線、人物どうしの配置が見えてくる。写真を並べたレーベル資料とは違い、一度Eminemの手と目を通った「仲間たち」の像だ。

D12 / DESHAUN HOLTON
2006年4月、Proofが亡くなった。Eminemの盟友であり、D12の中心人物だった彼の声は、本作の9曲目「Trapped」に収められている。約58秒。短い独演だが、アルバムの中でその存在は小さくない。
ただし、本作全体をProofの追悼アルバムと捉えると、企画の焦点が変わってしまう。Eminemは発売前の説明で、D12やProofの未発表音源に関する計画と、この新人・新曲の企画を区別していた。
思い出だけでなく、MCとしてのProofを聴く。その視点が「Trapped」を、本作に集まったほかの声ともつなげる。
Eminemによる企画の説明 ↗09 / Trappedを読む ↓FILE 08 / SHADY RECORDS
誰の声が、どこで前へ出るのか。
基本22曲を曲順で。短評はそのまま読み、曲を開くとクレジットと聴きどころを確認できます。
Eminem
約56秒の導入。麻薬を連想させるレーベル名の言葉遊びで扉を開き、ここから先をEminem個人の連作ではなくShadyの企画として聴くよう促す。短さそのものが、次の集団曲へ素早く席を譲る構成になっている。
ここで重要なのは、長いヴァースではなく声による点呼だ。イントロでレーベルの看板を掲げてから、次の曲で実際のMCたちへマイクが渡る。この短い接続が『Eminem Presents』という名義を耳で理解させる。
制作クレジット ↗Eminem / Obie Trice / Stat Quo / Bobby Creekwater / Ca$his
古参のObieと新人三人を同じ曲に乗せる、作品の名刺。Eminemの知名度から入っても、続く声の違いを聴き分けると目的が分かる。新人を別々の小部屋へ隔離せず、最初の長尺曲で一緒に提示する編集が鮮やかだ。
Eminem、Obieの声を知っているほど、Stat、Bobby、Ca$hisが入る瞬間の質感の変化が際立つ。速さだけを追うより、語尾の伸ばし方、低音の置き方、拍の隙間の使い方を比べたい。新しい三人の名を、プロフィールより先に声として刻むオープニングだ。
制作クレジット ↗Obie Trice
ObieによるD12楽曲の再訪。リミックスという名の既知の素材が、新人中心の企画とShadyの既存カタログを接続する。D12の集団曲からObieの声へ焦点が移り、馴染みある曲の輪郭も変わって聞こえる。
原曲はD12『Devil’s Night』のカタログに属するが、ここで中心になるのはObieの語り口。既存曲の名前を借りながら、聴き手の注目を別のMCに移す。この「知っている曲から、別の声へ」という導線は、後半のリミックス群にも通じる。
制作クレジット ↗Bizarre / Kuniva
D12からBizarreとKunivaが二人で参加する約2分の曲。集団の固有名だけを看板にせず、個々の声をコンピレーションの中へ散らす設計が見える。「Trapped」や後半の「Cry Now」と併せるとD12の点在の仕方が分かる。
Bizarreの崩した調子とKunivaの押し出しを続けて聴くと、D12を一つの声として扱えないことが分かる。短い曲の中に二人を収めるため、展開を待つよりも、入れ替わる瞬間と発声の差へ集中したい。
制作クレジット ↗Ca$his
Ca$his初の単独ショーケース。タイトルそのものをレーベルの自己紹介に変え、集団曲「We’re Back」で初めて声を知った聴き手を、今度は一人のフロウへ誘導する。Eminem制作曲一辺倒ではないことも、この曲のRikanattiの仕事が示す。
レーベル名を繰り返すフックが、Ca$hisの名前を覚えるための目印になる。Rikanattiとの組み合わせを単独曲で提示することで、スターとの共演だけでは測れない本人の持ち味を確かめられる。彼の参加曲をたどるなら、この曲から始めると輪郭がつかみやすい。
制作クレジット ↗
Eminem / 50 Cent
二人の知名度で作品名を印象付けるタイトル曲。隣の「You Don’t Know」がCa$hisとLloyd Banksも招く連帯の見本なら、ここは二人の掛け合いを前面に置く。人数を変えながら声の組み合わせを聴かせる、前半の大きな山場だ。
題名の「補充・再投入」を思わせる響きに、二人の再集合が重なる。Eminemの細かく畳みかける言葉と、50 Centの重心の低い節回しを比較すると、同じビートの余白の使い方が違う。次の四人曲へつなぐ前に、看板の強さを示す配置だ。
制作クレジット ↗Eminem / 50 Cent / Ca$his / Lloyd Banks
最初のシングルと公式MV。ShadyのEminemとCa$his、G-Unit側の50 CentとLloyd Banksを同じマイクリレーに置き、新人Ca$hisの声を最も大きな入口へ送り出す。サビと各人のヴァースが交互に現れる配置を聴き比べたい。
50 Centのフックが曲の輪郭をつくり、Eminem、Ca$his、Lloyd Banksへと聴き手の視線が移る。Ca$hisを短い紹介だけで終わらせず、一人のヴァース担当者として並べた点が大切だ。公式MVの護送・収監を思わせる演出も、四人の危険な集団像を強める。
制作クレジット ↗
Eminem / 50 Cent
タイトル曲と同じ二人ながら、より軽妙な語感と反復でキャラクターを見せる。前曲の四人のデモンストレーションから二人へ絞り、聴き手の緊張をいったん緩める役目。二曲のテンション差がレーベル作品の振幅を広げる。
題名の馴染みやすい語感を、相手に取り合わない態度やからかいへ変える。Eminemの過剰な言葉遊びと50 Centの飄々とした声の差が笑いを生む。二人の曲を比べるなら、タイトル曲の看板的な役目に対し、こちらはキャラクターの相性を楽しむ一曲と聴ける。
制作クレジット ↗Proof
約58秒のProofの独演。Eminemと50 Centの共演曲の直後で、声が一人に絞られる。短い尺にも言葉を詰め込むMCの呼吸が残る。Proofを失った2006年の作品で、その声に耳を向け直す場所になっている。
短さを未完成さと同一視する必要はない。約58秒というサイズによって、Proofの声は一度の集中した登場として記憶される。前後の派手な共演曲から切り離して聴くと、一人のMCとして言葉を押し出す存在感がいっそう際立つ。
制作クレジット ↗
Swifty McVay / Mr. Porter (dEnAun)
D12のSwifty McVayとMr. Porterが組む一曲。Proofの短い曲の直後に別のD12メンバーの声が続くが、D12名義の新アルバムではない。Witt & Pepの制作によって、Eminem主導のビートからも音像が切り替わる。
Mr. Porterをプロデューサー名としてだけ知る人には、ラッパーとしての声を聴ける場所でもある。ここでの制作クレジットはWitt & Pep。演者と制作者を分けて見ると、D12内の役割がそのまま本作へ持ち込まれているわけではないと分かる。
制作クレジット ↗Ca$his
「Everything Is Shady」に続くCa$hisの単独枠。集団曲と大看板シングルで耳に残した声を、ここで再び一人の主役として聴かせる。同じRikanatti制作という接点があり、彼の売り出し方を二曲で比較できる。
タイトルの呼びかけに対し、Ca$hisは発声の鋭さと繰り返しで自分の領域を作る。「Everything Is Shady」がレーベル名を掲げる入口なら、こちらは本人の挑戦的な姿勢を押し出す枠。二曲のソロを置く厚遇に、新人を覚えてもらおうとする企画意図が表れている。
制作クレジット ↗Stat Quo
Stat Quoの単独曲を、Focus...のビートに乗せて提示。共同契約の紹介文だけではつかめない、アトランタ出身MCの一人称の存在感を聴く場所だ。次の「Tryin’ Ta Win」と「Get Low」とで三つの制作陣の違いが分かる。
Focus...制作のこの曲、Alchemistによる「Tryin’ Ta Win」、Dr. Dreらによる「Get Low」。三曲の制作者を並べるだけでも、Statが一種類のサウンドに固定されていないと分かる。まず声とビートの間合いを覚え、ほかの二曲でその印象がどう変わるか聴きたい。
制作クレジット ↗Obie Trice / Ca$his
既存組のObieと新加入Ca$hisをつなぐ一曲。レーベル名をそのまま合言葉にしたタイトルに対し、The Alchemistの制作がEminem中心のサウンドから手触りを変える。世代交代を断絶として見せない橋渡しだ。
ObieとCa$hisの二人に絞ることで、大人数曲では通り過ぎやすい声の差が前へ出る。すでにソロ作品を持つObieと、これから紹介されるCa$hisがレーベルの旗の下で並ぶ。先輩と新人の関係を、説明文ではなく共演そのもので見せる曲だ。
制作クレジット ↗Bobby Creekwater
Bobby Creekwaterに正面からカメラを向ける約4分半。集団曲で名前を覚えた聴き手が、彼の声を連続して聴ける重要な展示枠。The Alchemistとの接点は契約前のデモ/スタジオの経緯ともつながる。
Bobbyの少し粘りのある節回しが、Alchemistの厚みのあるループの上で前へ出る。言葉を全部同じ強さで打つのではなく、語尾と間を使ってフレーズを残すタイプのMCだと分かる。客演の断片ではなく、一曲を通して彼の重心をつかめる本作の重要な入口。
制作クレジット ↗
Stat Quo
Stat Quoの再登場。Focus...制作の「By My Side」と異なり、The Alchemistとの組み合わせで彼の声の別の輪郭を出す。題名の「勝とうとしている」という進行形も、2006年の期待を後年の結果で塗りつぶさずに聴く手掛かりになる。
同じStatのソロでも、Focus...やDr. Dreの曲とは別の背景に声が置かれる。タイトルに掲げた勝ちに向かう姿勢と、ビートへ乗せる言葉の圧力を結びつけて聴きたい。新人の紹介を一発のシングルだけに託さない、本作の分散したショーケースを象徴する。
制作クレジット ↗Akon / Stat Quo / Bobby Creekwater
Akonの既存ヒットの枠へStat QuoとBobby Creekwaterを加えるリミックス。二人の新人をソロ曲だけでなく、外部の聴衆にも届く曲へ接続する。Akonという外部のヒットメーカーの存在が、レーベル内だけでは生まれない接点を作る。
Akonのヒット曲の形式へStat QuoとBobby Creekwaterが入る。元曲の知名度が入口となり、聴き慣れたフックの先で新しい声に出会う仕組みだ。「There He Is」のBobbyと比べると、ソロ曲とポップな共演枠での聴こえ方の違いも楽しめる。
制作クレジット ↗
Eminem
約2分のEminem単独曲。ロスターの声を重ねる中盤以降に、司会者が一人でマイクを握り直す短い割り込みとして機能する。「No Apologies」と比べれば、ソロ枠でも役目と長さが異なる。
約2分の短い独演で、追い詰められた視線や歴史的事件を思わせるイメージが凝縮される。集団を紹介する長い作品の終盤で、急に一人の頭の中へ入るような感覚がある。この内向きの緊張が、最後の「No Apologies」を待つ聴き方にもつながる。
制作クレジット ↗
Stat Quo
Stat Quoの三曲目の単独展示はDr. Dre制作、Dawaun Parker共同制作。Eminemのプロデュース、Focus...、The Alchemistと異なる回路を与えられたことが、Shady/Aftermath共同契約の実感になる。ラストの新人枠として重要だ。
Dr. DreとDawaun Parkerの制作陣がStatを支える。Eminemのレーベル紹介盤の中でも、Aftermathとの共同関係を制作クレジットから具体的にたどれる曲だ。「By My Side」「Tryin’ Ta Win」と続けて聴くと、三種類のビートに対して声の輪郭がどう保たれるか分かる。
制作クレジット ↗50 Cent
50 Centの既発曲をEminemが追加制作したリミックス。原曲のDisco Dの仕事を起点に、EminemとLuis Restoの追加制作が別の景色を与える。G-Unit側の既存資産をShadyの文脈へ引き込む一例になっている。
元曲は50 Cent『The Massacre』の収録曲で、制作の出発点にはDisco Dがいる。本作ではEminemとLuis Restoの追加制作が加わる。新録の共演曲とは違い、既存の50 Centの世界を本作の音像へ組み直すリミックスという参加方法に注目したい。
制作クレジット ↗Nate Dogg / Eminem / Obie Trice / Bobby Creekwater
Nate Doggの声とEminemの既存曲を足場に、ObieとBobby Creekwaterを追加するリミックス。Bobbyは単独の「There He Is」に続き、広く知られた曲の中にも置かれる。Shady内部と外部ゲストの境界が見える曲だ。
Nate Doggの歌うフックの強さを残しながら、ObieとBobbyの声が新たな流れを作る。「Smack That」と並び、ヒット曲の入口を新人へ開く配置だ。Eminemの名前だけで聴くと見落としやすい、歌・ラップ・追加参加者の役割分担を確かめたい。
制作クレジット ↗Obie Trice / Kuniva / Bobby Creekwater / Ca$his / Stat Quo
Obieの曲をShadyの集団ラップへ組み替えた長尺リミックス。KunivaというD12の接点と、新人三人が一曲に再集合する構成が、冒頭の「We’re Back」を終盤で呼び戻す。原曲の公式MVと本作のリミックスは同一音源ではない。
Obieの曲を土台に、Kunivaと新人三人が交差する。誰か一人の新人を紹介する段階を越え、既存組と新加入組を同じリミックスに並べる終盤の集約点。直後にEminem一人の最終曲が来るため、集団の最後の大きな点呼としても機能する。
制作クレジット ↗Eminem
一人で締める約4分の最終曲。集団ショーケースの最後にEminemの声だけが残る配置は、主催者がマイクを引き取る結末として読める。反復する暗い旋律と、密度の高い言葉の対照が、独演の切実さを引き立てる。
言葉を書く自分と批判する外の世界の距離を、謝罪しないという反復で押し返す。多人数の声が続いた後だけに、一人の声と沈んだ旋律へ絞られる変化が大きい。最後に置かれた曲として聴けば、主催者が自分の表現の立場を改めて引き受ける締めくくりになる。
制作クレジット ↗

THE SINGLE / 2006
この曲は『The Re-Up』の入口として最も分かりやすい。大きな名前が集まること自体より、その輪の中にCa$hisを置いていることが重要だ。新人の紹介を単独の小さな枠へ閉じず、Eminemと50 Centの知名度が届く場所へ送り出す。
50 Centのフック、Eminemの密度の高い言葉、Ca$hisの硬い声、Lloyd Banksの低い押し出し。同じ曲の中で声の差を聴くと、ShadyとG-Unitのつながりが、単なる看板の連名ではなくなる。
公式MVは護送や拘束、収監を思わせる映像で四人の集団像を作る。映像の大掛かりさも含めて、Ca$hisがこの場所へ出てくる意味を見たい。ソロ曲へ進む前の、強い名刺になる。
FILE 10 / SHADY RECORDS
同じ二人でも、曲の役割は違う。

タイトル曲は二人の再集合を作品名へ結びつける。知名度と声のコントラストで、アルバムの看板を耳に残す。Eminemの詰め込むリズムと50 Centの引いた調子の違いを聴きたい。
こちらは反復とユーモアが二人のキャラクターを浮かび上がらせる。大人数の「You Don’t Know」の後で、掛け合いの軽妙さへ焦点を絞る。制作はEminem、追加制作にLuis Resto。看板を背負う強さと、二人で遊ぶ余裕が同居する。

全員を送り出した後に、Eminem自身の独演が来る。批判にさらされる書き手としての立場を、暗い旋律と反復するフックで押し返す。多人数曲が続いた後だからこそ、声が一つになる変化が重い。
言葉を前へ押し出すヴァースと、旋律を反復するフック。その往復が、苛立ちを一過性の勢いで終わらせない。声の密度が変わっても、ビートの陰影は続き、独演の内側へ聴き手を引き込む。
終曲として聴くと、本作の主催者が最後に自分の表現の立場を引き受ける締めくくりとして響く。新人へ場所を譲ることと、自分の声を失わないこと。その二つが、最後に重なる。
LISTEN ON YOUTUBEFILE 12 / SHADY RECORDS
Eminemは、声を乗せる場所も作った。

ラッパーであり、プロデューサー。
そして、作品を束ねる人。
Eminemの制作曲が大きな骨格をつくり、Luis Restoの追加制作が複数曲を支える。一方で、すべてを同じ制作陣に統一してはいない。
Ca$hisにはRikanattiのソロ曲。StatにはFocus...、Alchemist、Dr. DreとDawaun Parker。Bobbyの「There He Is」にはAlchemist。声ごとに別の背景を与えるところに、ショーケースとしての広がりがある。
The Alchemistは「We Ride for Shady」「There He Is」「Tryin’ Ta Win」を制作し、ミックステープ的に作品をまとめる役目も担った。AkonやWitt & Pep、Disco Dを起点にしたリミックスまでを含め、一人の作品とは違う制作の地図が浮かぶ。
曲別制作クレジット ↗FILE 13 / SHADY RECORDS
グループの名を、個々の声へほどく。


「Murder」はBizarreとKuniva。「Trapped」はProof。「Whatever You Want」はSwifty McVayとMr. Porter。さらにKunivaは「Cry Now」のリミックスにも登場する。
D12名義の新しいアルバムではなく、メンバーがレーベルの企画へ散らばって参加している。集団の知名度を借りながら、一人ずつ声を認識する聴き方ができる。
Proofを失った年の作品という背景は重い。それでも、すべての曲を同じ悲しみで括らず、それぞれのMCが担う曲の役割へ耳を戻したい。
FILE 14 / SHADY RECORDS
数字が示す、2006年の到達点。
米国アルバム・チャート初登場2位。
初週約30万9,000枚。2006年12月の報道値。
英国コンピレーション・チャート最高3位。
Shady公式の回顧でもプラチナ作品として紹介される。本作の数字は、Eminemの知名度で新人に大きな入口を作る企画が、広い流通へ届いたことを示している。
FILE 15 / SHADY RECORDS
日本では、23曲で届いた。

エミネム・プレゼンツ・ザ・リ・アップ
2006年12月6日。
米国発売の翌日に、日本盤。
国内盤の品番はUICS-1128。基本22曲に、Stat Quoの「Billion Bucks」を追加した全23曲で発売された。国内曲目では、この追加曲がUK&日本盤ボーナストラックと表記される。
日本語の曲名から読む場合も、リミックス名の違いを残すことが大切だ。「Pistol Pistol」「Smack That」「Shake That」「Cry Now」「Ski Mask Way」は、本作の版を聴いてこそ参加者の違いが分かる。
2006年日本盤 ↗2007年限定盤 ↗FILE 16 / SHADY RECORDS
評価が割れた理由も、この作品の一部。

A SNAPSHOT OF WHAT CAME NEXT
この一枚を、後に誰がどれだけ売れたかだけで読む必要はない。Ca$his、Stat Quo、Bobby Creekwaterへ、どの曲を、誰との共演を、どの制作者を用意したか。その配置に、レーベルの次の一手が残っている。
ObieとD12の声、50 Centとの結びつき、Proofが残した短い独演。そしてEminemが全員の顔を描いたジャケット。
ミックステープからアルバムへ変わったのは、器だけではない。次の名前をもっと遠くへ届けようとする意志が、そのまま作品の規模になった。



FILE 18 / SHADY RECORDS
The Re-Upについて、よくある疑問。
Eminemが主導するShady Recordsのコンピレーションです。複数のMCがソロや共演、リミックスで登場します。
当初はストリート向けミックステープの企画でしたが、制作が充実したため正式なアルバムとして発売されました。
Eminemが自分の名前と制作力を使い、レーベルの仲間や新人を紹介する作品だからです。
はい。本人は2026年のShade 45で、一人ずつ描いてコンピューターでサイズを合わせ、約2か月かけたと振り返っています。
Ca$his、Stat Quo、Bobby Creekwaterが企画の中心です。各人にソロ曲と共演曲が用意されています。
二人ともアトランタ出身ですが、声と参加曲の構成は違います。StatはShady/Aftermathの共同関係、BobbyはShadyの新人として紹介されました。